WordPress[1]https://ja.wordpress.com/create/は、ブログやコーポレートサイト、ニュースサイト、アフィリエイトサイトなど様々な用途で利用されているWebサイト作成で人気なCMS(Contents Management System)の1つです。プラグインも豊富でカスタマイズしやすく、PHP言語の知識があれば欲しい機能も自分で加えることができるのも大変魅力です。WordPressはオープンソースソフトウェアとして提供されており、誰でも簡単にサーバーにインストールして使い始めることができますが、どのサーバーがいいのか悩ましいところだと思います。
今回は、オープンソースのWordPressをレンタルサーバーに設置するとして、どのような代表的なレンタルサーバーがあって、また各レンタルサーバーでどういった特徴があるのか、WordPressを使う上での注意点も含めて、これから使ってみたいと思われている方向けに分かりやすいようざっくりまとめてみました。
WordPressを動かすには
WordPressを動かす[2]http://wpdocs.osdn.jp/サーバーの用意には、プログラミング言語であるPHPとデータベースソフトウェアMySQL[3]https://www-jp.mysql.com(またはMariaDB[4]MySQL互換のデータベースで、MySQLの創設者により始められたプロジェクト。https://mariadb.org)がサポートされている必要があります。これについては、ほとんどのレンタルサーバーではこれらのソフトウェアが動作する環境が提供されているのでまず心配はいりません。
それから、最近のレンタルサーバーでは『WordPressの簡単インストール』といった機能が提供されており、初めての方でもすぐにWordPressを使い始められるような環境が整備されていることが多いようです。従来は(すみません少し古い人間でして・・・)、ソフトウェアをダウンロードして、レンタルサーバーにFTPソフトでアップロードして、データベースを準備して、インストールウィザードを開いて・・・とステップを踏んでいたのですが、簡単インストールではそれらのステップを自動的に行なってくれます。ですので、WordPressでWebサイトを作りたいと思ってから実際に利用し始めるまでのステップが非常に簡単になっています。
WordPressを動かすのに気をつけたいこと
WordPressはデータベースを使いますので、静的なページだけで構成されるWebサイトに比べるとページの描画までにマシンリソースを必要とします。また、WordPressでは豊富なプラグインが提供されており、それらを利用すると簡単にWebサイトに機能追加することができるため、ついつい多くのプラグインをインストールしてしまいがちです。プラグインを入れたために逆にWebサイトが重くなったということもあるかもしれません。そうなってしまうと、サイトへの負荷が少し増えただけでサーバーが不安定な状態になり、サイトへ繋がりにくくなったり、場合によってはレンタルサーバーでサイトへのアクセス制限がかかったりすることもあります。プラグインは入れすぎない(そしてインストールで一度に入れすぎない)、それから怪しいプラグインは停止するのが良いでしょう。
そこで、サイトアクセスの負荷を軽減し高速化するための方法の1つとしてキャッシュ機能を利用したりします。以前に作成・利用されたデータを記憶して、次回にその記憶されたデータを取り出し利用することで余分なマシンリソースの使用を減らし、高速にレスポンスを返す仕組みです。WordPressでは、キャッシュ機能をプラグインとして利用できるものがありますが、WordPressはあくまでWebサーバーの上で動作するPHPのアプリケーションなので、サーバーの内部レベルやミドルウェアレベルでのチューニングはできません。ですが、レンタルサーバーの中にはミドルウェアレベルやサーバー構成の中でキャッシュ機能を提供していたり、その他高速化のための仕組みを提供しているものがあり、WordPressを動かすレンタルサーバーを決める際の1つの選択基準[5]ネットワーク、サーバースペックやマルチテナント、リバースプロキシ、ソフトウェア、CDNなど高速なレスポンスを実現する上で他にも色々と関係する項目がありますになるでしょう。
レンタルサーバーの特徴比較
以上をふまえた上で、WordPressを使ったサイトを作成するのにどのような代表的なレンタルサーバーがあるのか見てみましょう。以下に代表的なレンタルサーバーと主な特徴をまとめてみました。共用レンタルサーバー[6]複数のユーザーとサーバーを共用で使うタイプのレンタルサーバーです。で、よく知られていて月額もそこそこで、比較的始め易いものに絞っています。また、使い勝手がわからずいきなり契約するのに躊躇される方もいると思いますので、ここではお試し期間があるものを選んでいます。
- キャンペーンなどで初期費用が無料だったりする場合もあるので、下表は調査時点(2016年12月10日)の通常プランの場合としてあくまで参考程度で見てください。
- 不明な項目は?にしています。詳細は公式サイトをご参照ください。
- WordPressが使える標準的なプランで記載しています。
サーバー | XSERVER[7]https://www.xserver.ne.jp/functions/ X10プラン |
wpXサーバ[8]https://www.wpx.ne.jp/server/service/functions.php | さくらレンタル スタンダードプラン[9]http://www.sakura.ne.jp/plans.html |
ロリポップ スタンダード[10]https://lolipop.jp/service/about/ |
ヘテムル[11]https://heteml.jp/service/function/ | カゴヤ [12]https://www.kagoya.jp/shared3g/plan.html#sh_header S21 |
---|---|---|---|---|---|---|
初期費用 | 3000円 | 5000円 | 1029円 | 1500円 | 3950円 | 3240円 |
月額 (1年契約) |
1000円 | 1000円 | 500円 | 500円 | 1500円 | 1728円 |
マルチ ドメイン |
無制限 | 10個 | 20個 | 100個 | 無制限 | 無制限 |
独自SSL | ○ | ○ | ○[13]SNI。https://ja.wikipedia.org/wiki/Server_Name_Indication | ○ | ○ | ○ |
データ ベース |
50個 | データベース1つ:500 MB WordPress設置可能数:10 |
20個 | 30個 | 100個 | 合計10GB(追加可能) (1GB単位で利用) |
Disk 容量 |
200 GB | 30 GB | 100 GB | 120 GB | 256 GB | 300GB (Web: 200GB + Mail: 100GB) |
PHP | 5/7系 | 5/7系 | 4/5系 | 5系 | 5/7系 | 5/7系 |
PHP動作モード | FastCGI[14]プロセス起動/終了のオーバヘッドを減らし高速に処理するための仕組み。 FastCGIについて | レンタルサーバーならエックスサーバー レンタルサーバー「エックスサーバー」のご利用マニュアル|「FastCGI」とは、プロセス初回実行時に該当プロセスを一定時間サーバー内に保持し、次回以降の「プロセスの起動/終了」を省略することで、プログラム高速化・CPU負荷の軽減を図る機能で... www.xserver.ne.jp |
? | CGI版 | CGI版 モジュール版[15]https://lolipop.jp/nextgen/#dsophp_anchor |
CGI版 モジュール版 |
CGI版 |
他高速化対応 など (サイトの機能一覧より読み取れる範囲での内容です) |
・OPCache(PHP)[16]http://pecl.php.net/package/ZendOpcache ・mod_pagespeed[17]https://gitdub.com/pagespeed/mod_pagespeed |
・リバースプロキシによるキャッシュ ・SSDストライピング ・mod_pagespeed[18]https://gitdub.com/pagespeed/mod_pagespeed |
? | ? | ・SSD | ・SSD |
SSH アクセス |
○ | x | ○ | ○ | ○ | ○ |
OS | Linux | Linux | FreeBSD | Linux | Linux | Linux |
簡単 インストール |
○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
お試し期間 | 10日 | 14日 | 14日 | 10日 | 15日 | 14日 |
公式サイト | XSERVER 詳細へ |
wpX 詳細へ |
さくらレンタル 詳細へ |
ロリポップ 詳細へ |
ヘテムル 詳細へ |
カゴヤ 詳細へ |
(2016年12月10日調べ)
XSERVER
XSERVERは、WordPressユーザーに人気なレンタルサーバの1つで、私も使っています。月額は少し高めですが、管理パネルも見やすく使い易いと思います。WordPressは『簡単インストール機能』で容易に設置することができるので、初めての方でもすぐに使い始めることができます。
x10プランでは、マルチドメイン無制限、データベースは50個、Diskは200GBと通常利用においてリソースは十分割り当てられており、複数サイトを運営される方にとっても十分なプランとなっています。このサイトもXSERVERで動いており数十の投稿がありますが、使用量は220MB程度でまだまだ余裕があります。
その他特徴として、FastCGIとOPCacheという高速化のためのソフトウェアが使われています。また、PHPやMySQLも最新バージョンがサポートされています。
最近は検索エンジンのランキングにもSSL対応が影響する[19]https://webmaster-ja.googleblog.com/2014/08/https-as-ranking-signal.htmlと言われていますが、XSERVERでは独自SSLを無料(ドメイン認証型、Let’s Encrypt[20]https://www.xserver.ne.jp/functions/service_ssl.php)で利用できるので、その点も魅力の1つです。
筆者による単純なベンチマーク[21]Apache Bench。サーバーに過度な負荷をかけないレベルで実施しています。過度な負荷を与えることはDoS攻撃とみなされる可能性があるので気をつけましょう。では、XSERVER X10プランでさくらレンタルスタンダードプランより秒間数倍程度多くのリクエストをさばくことができましたので、初めからトラフィック増大が予想される場合はXSERVERを選択するのも良いでしょう。
wpXサーバー
XSERVERと運営元が同じでWordPressの運用に特化されたレンタルサーバーです。高速化のためにリバースプロキシやSSDなどの対応がされているようです。一見するとXSERVERに比べてDisk容量やWordPress設置数など少なくXSERVERの方が良いのでは?と感じてしまいますが、シンプルなベンチを試したところパフォーマンスはXSERVERよりもかなり良い結果(秒間リクエストで数倍〜十倍)[22]Apache Bench。サーバーに過度な負荷をかけないレベルで実施しています。過度な負荷を与えることはDoS攻撃とみなされる可能性があるので気をつけましょう。となりましたので、WordPress専用で高速化されているというのも納得できます。
wpXは、XSERVERと比べると管理画面のメニューが少なくかなりシンプルな構成になっています。WordPressは、管理画面のメニューから簡単にインストールでき、インストールされているWordPressに関するサマリーが一覧で確認できるようになっており、まさにWordPressに特化されているといった感じです。
また、XSERVERと同じく独自SSLも無料で利用できます(ドメイン認証型、Let’s Encrypt)。
WordPressに専念してサイトを運用されたい方は、お試し期間もあるのでwpXサーバーを検討しても良いかと思います。速いです
さくらレンタルサーバー
レンタルサーバーといえば誰もが知っているであろうさくらレンタルサーバーです。特徴は、初期費用と月額のコストを低く抑えられるので比較的始めやすいといったところになるかと思います。管理画面のデザインは非常にシンプルです。WordPressの簡単インストール機能もあるので、WordPressの設置も簡単にできます。
さくらレンタルサーバーでは、PHPはCGIモードで動作しています(上位プランではモジュールモードを利用できます)ので、高速性という点においては、FastCGIやモジュール版に比べると軍配は後者に上がるかと思いますが、低コストでDisk容量も100GBと豊富なリソースが使えます。
また、WordPressではないですがさくらのブログというサービス[23]http://www.sakura.ne.jp/blog/を使えるので、WordPressと合わせて利用するのも魅力的かと思います。
ロリポップ
ロリポップは、サンタのマスコットが印象的で誰もが知っているであろうレンタルサーバーの1つです。こちらも特徴としては、まずコストが挙げられるかと思います。スタンダードプランで初期費用や月額もさくらレンタルサーバー並みに抑えることができます。WordPressも簡単インストール機能があるので設置も簡単に行なえます。
さくらレンタルサーバーと違って魅力的な点は、スタンダートプランでモジュール版PHPが使える点です。通常CGI版よりモジュール版の方が高速に動作します。ロリポップのサイトによる説明で、同社のベンチマークによるとモジュール版はCGI版より37倍高速に動作するとあります(いずれもベンチはロリポップの環境にて実施されたと記載されています)。シンプルなベンチを試してみましたが確かに速いです(具体的な数値は載せていませんがXSERVERよりも良い値が出てました)。月額500円(年契約)のスタンダードプランで高速なモジュール版が使えるので、低コストで性能を求める方は是非検討してみてはと思います。
また、さくらレンタルサーバーと同様にロリポップでもロリポブログというブログサービスが使えますので、WordPressと合わせて利用するのも良いでしょう。
heteml(ヘテムル)
ロリポップと運営元は同じでGMOペパボさんが運営されているレンタルサーバーです。月額はやや高めに感じるかもしれませんが、36ヶ月契約だと月額コストはXSERVER X10プラン並みになりますので、じっくりとサイトを運用される方は長期契約が良いでしょう。もちろん、WordPressも簡単インストール機能があるので設置は簡単です。
ヘテムルの特徴は、やはり性能でしょう。こちらはオールSSDということでハード面における高速化対応がされています。また、PHPもモジュール版が使えますので非常に高速に動作することが期待できます。シンプルなベンチを試してみたところ、かなり速いです。wpXでは、プロキシキャッシュの効かないページ(wp-adminとか)と効くページで比べると効かないページでは多少性能が下がりますが、シンプルなベンチだとヘテムルでは同様な性能でした。最近サーバーが刷新され、また拡張版の「モジュール版PHP」がリリースされたようです[24]https://heteml.jp/info/detail/id/1837。同時接続数が少々増えても高速なレスポンスが期待できそうです。かなりイイです。
そのほか、マルチドメイン無制限、SSDでありながらDisk容量256GBと豊富なリソースが用意されています。
WordPressが簡単・すぐに使える『レンタルサーバーheteml(ヘテムル)』
KAGOYA
KAGOYAさんは、データベースが使えるプランはやや高めですが、転送量が多いのが特徴です。転送量は、Webやメール、FTPアップロードなどに利用されるデータ量のことです。サイズの大きい画像や動画などを扱う場合には転送量制限に引っかかってしまうかもしれませんが、KAGOYAさんは他のレンタルサーバーと比較すると転送量上限が大きく設定されています。もちろん、WordPressは簡単インストール機能があるので設置は簡単です。
高速化という点では、PHPはCGI版となっていますが、データベースのDiskがSSDが採用されているとありますので、データベースアクセスのあるリクエストでは性能向上が期待できます。
またその他、IPSという侵入防止装置が搭載されているのも特徴です(不正な侵入を検知し防御することのできる装置で、WAFよりも下のネットワークレイヤが守備範囲です。[25]最近は、WAFと言っても色々なサービスが増え広いレイヤーを指すものもあります。https://www.symantec.com/ja/jp/page.jsp?id=waf-ips-ids)
共用サーバーでも無料でIPS(侵入防止)がついているのはカゴヤだけ!
まとめ
以上代表的なレンタルサーバーのプランと特徴をWordPressを中心に比べてみました。どの会社さんも日々進化していますので、現時点での調べが今後も必ずしも当てはまるとは限りません。継続的にウォッチしていくのが大切だと思います。
触ってみての感想で、あくまで調査時点での個人的な見解なのですが、コストと性能に絞って判断すると、、
とにかく性能が一番!なら、
か、
コストも性能も重視したい!なら、
性能を重視するなら、
コスト重視なら、
転送量重視なら、
真に最高の性能を求める方は、、、
KUSANAGIという超高速WordPress仮想マシンをご存知の方もいるかもしれません。こちらは、共用のレンタルサーバーではありませんのでやや高度な知識が必要となりますが 爆速 です。とにかく性能が一番、大量トラフィックが見込まれる方は是非検討してみてはいかがでしょうか。
例えば、GMOさんの『ConoHa』はKUSANAGIを利用できます。
その他、KUSANAGIが動かせるサービスは以下を参照してみてください。
最後に
その他色々な比較軸があると思います。
試用期間があるので是非試してみてはいかがでしょうか?
脚注
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