『理科系の作文技術』から学んだわかりやすい文章の書き方

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読書の秋ということもあり,久しぶりに『理科系の作文技術』という本を読み返したので,備忘録を兼ねてまとめてみます。

この本との出会い

理科系の作文技術 (中公新書 (624))

理科系の作文技術 (中公新書 (624))

  • 作者: 木下是雄
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 1981/09/22
  • メディア: 新書
  • 購入: 107人 クリック: 1,559回
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私がこの本と出会ったのは,かれこれ12年ほど前です。当時大学で機械工学を専攻しており,大学4年生でちょうど卒業論文を書いていた時のことでした。もともと国語が苦手だった私は,文章を書くことがあまり得意ではありませんでした*1。ちょっとした読書感想文を書くのも苦労するくらいなのに,ましてや,まとまった単位の文章で,緻密で正確な論理展開が要求される”論文”は,私にとって非常に大きなハードルでした。そのような苦手意識をかかえながら,先人の文献を参考にしつつ,ある程度論文を書き上げたところで担当の先生にレビューをしていただいたところ,先生からの評価は案の定でした。

「XX君の論文何書いているかわからへん,これを読みなさい」

と。そして,この時先生にご紹介いただいたのがこの本だったのです。この後,この本にお世話になり,なんとか論文を提出して卒業することができました。

この挫折経験があったことから,文章に対しての苦手意識を少しずつ改善しなければと考えるようになりました。職種にもよるかと思いますが,社会に出れば嫌というほど文章を読み書きする機会は増えます。現に,最初に勤めた会社*2では文章を書く時間が圧倒的に仕事の大半を占めていました。ですので,私にとって少なくとも学生時代に文章をわかりやすく書くことに対する改善意識のきっかけを得られたのは幸いでした。それ以降,私はこの本をいつでもすぐに参照できるように,本棚のすぐ取り出せる位置に置いています。

ちなみに,何故最近になって本書を読み返しているかというと,もちろん仕事で度々文書を読み書きするということもあるのです*3が,とあるQ&Aでまとまった文章を書く機会があったからです。相手の質問に対し,相手が求めていることは何かを考え,自分の考えを整理した上で相手に理解してもらえるように,論理的にわかりやすく説明する必要があったのです。

この本はどんな本か

本書は,文章の書き方のコツが詰まったコンパクトな新書です。かばんに入れても場所をとらず,持ち運びも容易で重宝します。

この本は,タイトルに「理科系」と書かれていることから,主に理科系の研究者・技術者・学生を対象に,論文やレポート,説明書,学会講演,仕事の文書などの書き方について解説しています。ですが,本書のカバーには,”ひたすら明快・簡潔な表現を追求したこの本は,理科系だけでなく文科系の人たちにも新鮮な刺激を与えるにちがいない”と書かれているように,理科系・文科系問わず文書を書く人すべてに役立つ内容だと,私自身読んでみてそのように思います。

前半は,文章技術について,文書の役割の確認から,立案,組み立て,パラグラフ,文の構造・流れ,わかりやすく簡潔な表現,と説明が進んでいきます。後半は,具体的に理科系の扱う文書を例にポイントを解説してくれています。

本書の中で,著者は理科系の仕事の文書について以下のように考えを述べています。

それは,読者に伝えるべき内容が事実(状況を含む)と意見(判断や予測をふくむ)にかぎられていて,心情的要素を含まないことである。今後,事実や状況について人につたえる知識,または人からつたえられる知識を情報ということにするが,このことばを使えば,理科系の仕事の文書は情報と意見だけの伝達を使命とするといってもいい。 (P.5-6から抜粋)

そして,文章を書くときの心得について以下のように記しています。

内容の精選 必要なことはもれなく記述し,必要でないことは一つも書かないのが仕事の文書を書くときの第一原則である。(P6から抜粋)

事実と意見の区別 仕事の文書を書くときには,事実と意見の区別を明確にすることがとくに重要である (P7から抜粋)

記述の順序 文章ぜんたいが論理的な順序にしたがって組み立てられていなければならない

相手はまっさきに何をしりたがるか,情報をどういう順序にならべれば読者の期待にそえるか,ということに対する配慮 (P8から抜粋)

明快・簡潔な文章 (a)一文を書くたびに,その表現が一義的によめるかどうかを吟味すること,(b)はっきり言えることはズバリと言い切り,ぼかした表現を避ける,(c)できるだけ普通の用語,日常用語を使い,またなるべく短い文で文章を構成すること (P8から抜粋)

私は,上記の心得は,仕様書や説明書,研究計画書,レポート,論文といった理科系の仕事の文書以外にもあてはまることだと思います。企画書,提案書,報告書,ブログ,勉強会資料に至るまで,社内外問わず,様々な局面で事実や意見を正確に簡潔にわかりやすく相手に伝えることが求められると思います。これらが実践できていれば,「何が言いたいの?」「これは事実なの?確認した?」「であなたの意見は?」「なんでこう言えるの?」といった聞き返しをされる機会も減ってくると思います。私が,学生時代に先生から言われたのも,つまるところこれらの基本を押さえた文章を書けていなかったからなのです。

この本から学びつつ,文章を書く時に私なりに気をつけていること

当たり前だよと突っ込まれそうですが,何者でもない,ただのいちプログラムである私が,以下自分の頭を整理する意味も込めて,文章を書く時に気をつけている点をまとめてみたいと思います。

なお,”文書”と”文章”という言葉についてですが,私の手元の辞書*4では,

[文書] 文字で書いた物,書類.

[文章] 文字を連ねて,思想・感情を表したもの. 散文.

と記されており,ここから私なりに解釈すると,「文書」は文字の羅列で記録や証明を主としたもので,「文章」は感情表現を帯びた性質を持ったもの,となります。ここでは,両者を主として文字を構成要素とするものとして扱い,XX書という形あるものを特に「文書」と呼ぶことにします。

文書の目的は何かを考える

まず,この文書を何のために書いているのか,目的を明らかにします。ただ相手に知ってもらいたいだけなのか,相手から何らかのフィードバックや意見をもらいたいのか,相手に何かアクションを求めているのか。

目的によって体裁や構成も変わってきます。だたのお知らせ・案内書なのか,参考資料なのか,説明書なのか,報告書なのか,仕様書なのか,提案書や企画書なのか。

この文書は誰に向けたものかを考える

個人用のメモであれば,自分さえ理解できれば問題ありません。しかし,通常文書は人から参照されることを前提として記述します。書き始める前に,この文書は誰に向けて書いているのかを明確にします。グループメンバーへ向けたものなのか,経営層へ向けたものなのか,全社スタッフへ向けたものなのか,社外のお客様へ向けたものなのか,公的機関へ向けたものなのか,不特定多数の世間の方へ向けたものなのか。他に年齢や性別なども考慮します。

私自身,文書を書く時,誰に向けて文書を書いているのかを明確にし,意識することで,”この文章構成は相手がわかりづらいのではないだろうか”,”この言葉は自分の経験にしかない言葉で相手が理解できないのではないか”,と多少なりとも配慮ができるようになりました。文章に用いる”言葉”について,とりわけIT業界では次々に新しい言葉が用いられるように思いますが,誰に向けて文書を書いているのかを意識することで,予備知識のない異なる背景の方へ向けた文書の中で,自分の経験にしかない言葉や業界用語,外来語を散りばめることもなくなってきます。例えば,エンジニアが営業に向けて説明する資料であったり,その逆もまた然りです。

私は,過去に私が同席したことがある会議の中で,別の方が業界用語や外来語を多く含んだ資料をベースに相手に説明している時に,説明の途中で相手から「何を言っているのか,もう少しわかりやすく話してくれ」と指摘される場面に遭遇したことがあります。これは,まさに”誰に向けて”の配慮が欠けていたのだと思います。

このことは,その分野で長く経験を積み,精通するほど見失いがちになってきます。難しいですが,常に客観的に物事を考える姿勢が大切だと思います。

明快で簡潔なタイトルを設定する

文書の特徴を端的に表現できる言葉を選択します。私は,センスがないので簡潔かつわかりやすいタイトル設定ができず苦慮しています。私は,これは外せないという単語を決めて,簡潔で分かりやすくなるよう試行錯誤しながら並び替えを行ないます。

日本の大手ポータルサイトYahoo!さんのヤフートピックスは,13文字でタイトルをつけているそうです(以下の参照記事はやや古いかもしれませんが,本ブログ執筆現在Yahoo!さんのサイトを確認しても13文字前後でした)。

markezine.jp

主題を支えるバランスのとれた文章構成を考える

文書の主題から,主題を論理で支えるトピックをバランスよく並べていきます。各トピックの階層は,同じレベルの内容で構成します。文書によっては,階層の深さが一階層の時もあれば,数階層と深くなることもあります。トピックは,文書が誰に向けたものなのかをふまえた上で,相手が自然と違和感なく読み進めていけるストーリーになるように配置します。

以下,私なりの稚拙な例をあげてみます。

全体から部分へと記述する

文章の流れは,全体から部分へ説明を展開するようにします。鳥の目から虫の目のような視点の流れです。Google Earthで,住所を入力した時に,地球全体の映像から住所付近に焦点が絞り込まれていくようなイメージです。

トピックセンテンスと段落構成のバランスを考える

各章のトピックを書いていく時は,トピックから内容がズレないよう意識して段落を構成していきます。各段落では,最も伝えたいことをトピックセンテンス(段落の中心の話題)として定め,そのトピックセンテンスから内容が逸脱しないように意識しながら,段落を肉付けしていきます。段落中の文数があまりに多くなってくると,段落で伝えたいことがわかりにくくなってくるので,その時はトピック・センテンスの粒度を見直し,複数の段落に分ける等の対応を行ない,極力短く,わかりやすい段落構成を維持するようにします。

情報の強度を意識して使い分ける

事実や経験則、原理・法則・公理、有力説、専門家の意見,仮説といった要素を組み合わせてトピックセンテンスを際立たせます。あえて意表をつく論理展開をする場合は,「常識ではAはBだが,実際はAはCだ」のようなトピックを定めたうえで,事実や経験則,仮説を中心に構成します。

事実と意見の違いを明確にする

特に報告書などで意識する必要があるかと思いますが,それは事実なのか,それとも意見なのかを明確にし記述するようにします。文書に両者が混在していると,相手の理解や判断を妨げてしまう可能性があります。

これは,図表をもとに考察を行なう時などによく混同してしまいがちです。図表から誰もが明らかに読み取れる事実と,事実をふまえた上での示唆は区別して記述するようにします。

その文は一義的に読めるかを意識する

自分の意図した通りに文が解釈されるように気をつけます。以前,職場の先輩に「文書は一人歩きする」と教えていただいたことがあります。自分の書いた文書は担当の方のみが読むものと思っていたけれど,文書がいつの間にか様々な他の部署の方や関係会社の方に渡っているといった例も珍しくありません。文書が誰に読まれても自分の意図と異なった解釈をされないよう注意を払います(といっても案外難しく,なかなか100%の文章を書けた試しがありませんが)。

他にもあると思いますが,一部例をあげてみます。

形容詞や副詞の配置に気をつける

以下,例をあげてみます。

目的・理由・原因・方法の区別をする

「〜で」という表現は,時に曖昧さをもたらします。「〜という目的」なのか,「〜という理由で」なのか,「〜が原因で」なのか,「〜という方法で」「〜という手段で」なのか。前後の文脈から判断できれば,誤った解釈は避けられますが,できるだけ明確にした方が誤解を与えずにすみます。

以下,極端ではありますが例をあげてみます。

言葉は極力統一する

文章の中で説明している言葉を,突然他の言葉にすり替えて用いないようにします。この記事の中で言うと,例えば,「文書」と「文章」です。途中で,突然言葉がすり替わると,「あれ?何について説明しているんだっけ?」と混乱・混同してしまいます。文章の中で,極力言葉を統一する,または,事前に言葉の意味を定義をして,相手が混乱・混同しないよう配慮します。

読みやすさへの配慮をする

字面の白さを意識する

これは,よく聞くポイントかもしれません。漢字ばかりで文章が書かれていると,全体が黒く重たく読みにくい印象を与えてしまいます。かと言って,平仮名ばかりで書かれていると稚拙な印象を与えてしまうので,中間くらいがちょうどいいかもしれません。

主語・動詞を明確にし,文を短く簡潔に書く

長くて主語・動詞が追いづらい文があると,読者は途中で何について述べているのかを見失ってしまいます。特に,私のような文章の苦手な人間にとってはなおさら混乱の原因になります。文を書く時には,できるだけ「誰が」「何を」「する」をわかりやすくした方が,読み手が読みやすい文になるかと思います。ただ,すべての文がこの形だと単調になるきらいがあるので,加減が必要かもしれません。

「〜れる」「〜られる」表現を避ける

これもよく聞くポイントかと思います。主張する内容に自信がない時に,よく「思われる」とか「考えられる」という表現を使いがちです。「誰によって」が曖昧になる,主張がぼやけてしまう,などから「私は〜と思う」「私は〜と考える」などの的確な表現に置き換えた方が,わかりやすく説得力のある文章になります。

最後に

私自身,わかりやすい文章を書けているかというと,疑問符がつくところが多分にあります。ですが,本書で書かれている基本をおさえ,上記に紹介させていただいた内容を意識して実践することで,人から「何書いているかわからへん」と言われるようなことはなくなりました。

ちなみに,文章を書く時にコンパクトな国語辞典が手元にあると便利です。私は,いつもポケットサイズの国語辞典をかばんに入れて持ち歩いています。国語の苦手な私は,「この単語こんな意味だっけ?」と,とどまって考え,文を書く時に極力正確な単語を用いるよう意識しています。

以上突っ込みどころ満載ですが,私のような文章が苦手な人の参考になれば幸いです。

*1:現在も人に見せられる程ではないのですが,以前よりはましになっていると思っています。そしてブログを書くのは文章の練習でもあります。

*2:一度転職をしています。

*3:プログラマですが,プログラムの読み書きの時間が減っているのが悩みです。

*4:デイリーコンサイス国語辞典。

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